国際エネルギー機関(IEA)「2017年版の世界エネルギー見通し」によると、再生可能エネルギーが世界の発電量に占める比率が、16年の24%から40年に40%へ高まると予測。原油は需要拡大が続く半面、米国のシェールオイル増産や電気自動車(EV)の普及に弾みがつけば、価格が1バレル50〜70ドルと低位での均衡に向かうというシナリオも示した。

 太陽光や風力などの自然の力から得られる再生エネは、政策の後押しも受けて世界で導入が進んでいる。IEAは40年の再生エネ発電量が16年の2.6倍になると推計した。この間の発電量全体の伸びの3分の2を占める。発電量シェアは40%に高まる一方、化石燃料は65%から50%に、原子力は11%から10%にそれぞれ低下する。

 普及のけん引役は、新興国での太陽光発電の急成長だ。報告書は「中国とインドが主導し、太陽光は40年までに最大の低炭素発電源になる」と指摘した。欧州連合(EU)域内では新規発電の多くを再生エネが占め、30年以降の早期に「風力が主要電源になる」とした。固定買い取り制度など政策支援に加え、競争拡大による導入コストの低下が追い風になる。

 報告書は米シェールオイルとEVの台頭による影響も分析した。米国はシェールオイル生産量が25年までの15年間で日量800万バレル増え、20年代後半にも原油の純輸出国に転じると予測。需給の緩和で油価の下落圧力につながるとみている。

 EVは今回、世界の保有台数が16年の200万台から、40年に2億8千万台まで膨らむと想定。ガソリンが不要なEVの普及で、この期間に日量約250万バレルの原油需要が失われるとの予測を示した。16年版の前回見通しでは、40年のEV台数を1億5千万台、原油需要への影響を日量約130万バレルと推計していた。

 ただ報告書は「原油の死亡記事を書くのはまだ早い」とも指摘した。産業用など他分野で需要増が続くとみているためだ。40年の世界需要は日量約1億500万バレル(16年は約9400万バレル)へ伸びると推計。中心シナリオでは原油価格は25年に83ドル、40年に111ドルまで上昇すると予測した。

 米シェールオイル増産とEV普及が想定以上に進んだ場合の「原油安シナリオ」も試算した。シェールの資源量が倍増し、40年のEV保有台数が9億台になった場合、原油価格は長期的に50〜70ドルに収まるという。