ムニューシン米財務長官は12日、議会下院金融サービス委員会の公聴会で「米国は貿易戦争ではなく、貿易摩擦に直面している」との認識を示した。ただ中国や欧州連合(EU)などによる報復関税が米経済に与える悪影響について「注視している」と語った。

 ムニューシン氏は、中国の知的財産権侵害問題をめぐり「残念ながら多くの協議が物別れに終わった」と述べ、中国製品に対する制裁関税の正当性を説明。「中国が構造改革に真剣に努力したいのであれば、(トランプ政権は)いつでも話し合いに応じる」と語った。

 中国が、保有する巨額の米国債の売却などで報復する可能性を問われ、「中国が米国債を持っているのは(米国が)貿易赤字を抱えているからだ」と指摘。市場が懸念する理由は「現時点で見当たらない」としつつ、「引き続き注視する」と述べた。

 貿易摩擦の激化が世界的な景気悪化を招く恐れがあるとの見方には、好調な米経済を指摘し、「マイナスの影響はどこにも出ていない」と強調。ただ、農業など幅広い米産業が痛手を受けるとの懸念が強まっていることを踏まえ、雇用といった経済情勢に注意を払う考えを明らかにした。

 一方、北朝鮮については「制裁を緩和する計画はない」と明言。「米国は多くの対処法がある」と強調した。