中国では、5月からは一部都市で「デジタル人民元」実証実験がスタート。実証実験を始めるのは、蘇州市(江蘇省)や深セン市(広東省)、習近平国家主席の肝煎りで開発が進む雄安新区(河北省)、2022年の北京冬季五輪の開催地となる北京市の会場周辺など。蘇州市相城区では4月中に公務員らを対象にデジタルウォレット(財布)が割り当てられ、5月には通勤交通費補助の半額がデジタル元で支払われる。また、雄安新区の実験には小売業や飲食業が参加する予定で、米スターバックスやマクドナルドなど外資系企業も名を連ねている。

紙幣や硬貨を通じた新型コロナウイルス感染に対する警戒感がくすぶる中、「非接触」への流れも導入の機運を後押しする。

中国人民銀行(中央銀行)は2014年にデジタル元の研究に着手。昨年夏には人民銀幹部が「すぐにも実施可能」と強調するなど、中銀発行の法定通貨では世界初のデジタル通貨が間もなく登場するとの観測が高まっている。

人民銀が発行するデジタル元は市中銀行を経由して利用者に届き、既に広く普及しているスマートフォンの電子決済サービスを通じて流通する見込み。現金よりも迅速な決済が可能で、取引にかかるコストは少なくて済む。利用者は、銀行口座がなくても利用できる。

マネーロンダリング(資金洗浄)など違法行為の抑止につながると期待される一方、当局による監視が強まることを懸念する声もある。

米フェイスブック主導の仮想通貨(暗号資産)「リブラ」は、各国・地域の通貨と交換レートを固定させた複数のデジタル通貨を年内にも発行する計画とされる。