これまで、金生産会社は大量の温室効果ガスを排出しているものの、リスクヘッジの手段であることが一因となり、石炭生産会社などに比べ、厳しい監視の対象となっていなかったが、今年に入り金相場(ドル建て)が史上最高値を更新したこともあり、温室効果ガスの排出量削減に向けた具体的な対策を盛り込んだ透明性のある報告をまとめるよう、金生産各社への圧力が高まっている。

温室効果ガスの排出に関しては、一般的に石炭や鉄鉱石生産会社が名指しされるが、鉱業セクターにおいては、金生産会社の排出量も最も多い部類に入る。

環境や社会貢献、企業統治への取り組みを重視する「ESG評価」を導入している調査会社スカーン・アソシエーツのデータによると、輸送や下流部門の排出を織り込まなければ、金生産に伴う直接排出量(スコープ1)と間接排出量(スコープ2)は、銅、ニッケル、鉄鉱石、冶金(やきん)用石炭より多いとされる。

大型運搬トラックや電力供給は、温室効果ガスの主な排出源だが、金鉱石の品質低下により、鉱山各社は、エネルギーを大量消費するやり方で、さらに鉱山を深く採掘せざるを得ない状況になっている。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、2018年の金部門の二酸化炭素(CO2)排出量は、産金量1トン当たり3万2689トンで、前年比12%増加したと推計。19年の排出量はまだ公表されていない。