国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、22年のロシアの個人の地金・金貨の純購入量は25トン。21年と比べて4.7倍になり、購入量・伸び幅とも比較可能な10年以降で最高だった。伸び率は2位がエジプト(83%増)で、世界でも際立つ増加ペースだった。

地金・金貨に宝飾品を含めた個人の純購入量も、60.7トンと前年比で3割伸びた。クリミア併合で欧米による制裁を受けた14年以来の高水準をつけた。

経済制裁として、ロシアの新産金は主要な国際取引網から排除された。ロシアが金を売却し、ドルやユーロなど外貨を獲得できないようにする狙いがあったが、完全に国際市場から締め出されたわけではない。ロシア産の金は制裁で国際市場で売却しにくくなっているものの、中国は購入を続けている。中国税関総署によると、22年のロシアからの金輸入額は約3.9億ドル。前年と比べて約6割増えた。

制裁を受けても「安全資産」として換金手段が残されているとの思惑も、個人の金買いを促した。

中国など欧米の制裁と距離を置く国家では、「脱ドル」の一環で金の購入意欲が旺盛だ。ロシア国内で金需要が伸びれば、中国などロシア産を受け入れる国への流通が細り、代わりに欧米市場からの調達が増え、結果として需給タイトになりそうだ。